災害予測ウォッチ

ドローン・地上センサーによるリアルタイム状況把握:発災直後の自治体対応力強化への応用

Tags: ドローン, 地上センサー, リアルタイム状況把握, 災害対応, 自治体防災

発災直後の「見る力」が初動対応を左右する

大規模災害発生時、自治体職員の皆様が直面するのは、極めて限られた情報と時間の中での意思決定です。特に発災直後の数時間は、被害の全体像が見えず、混乱の中で的確な初動対応を行うことが困難な場合が多くあります。

どこで何が起きているのか、どれくらいの規模なのか、どの場所に助けが必要なのか――これらの情報をいかに迅速かつ正確に把握できるかが、その後の避難誘導、救助活動、支援物資の配布といった対応の効率性と効果を大きく左右します。

近年、この発災直後の状況把握を革新する技術として、ドローンと地上センサーの活用が注目されています。これらの技術が、自治体の「見る力」をどのように高め、対応力強化に貢献するのかを掘り下げていきます。

ドローン・地上センサーによるリアルタイム状況把握技術の概要

ここで取り上げるドローンと地上センサーは、「災害を予測する」というよりも、「発災によって生じた状況をリアルタイムに把握・推定する」ための技術群として位置づけられます。しかし、このリアルタイムな状況把握は、二次被害の予測や、より高精度な被害推定モデルへの入力情報として極めて重要であり、広義の「予測」システムの一部を構成するとも言えます。

これらの技術を組み合わせることで、点(センサー)の情報と面(ドローン映像)の情報を統合し、より詳細かつ広範囲なリアルタイムの被災状況を把握することが目指されています。

自治体防災における具体的な応用とメリット

ドローンと地上センサーを活用したリアルタイム状況把握は、自治体の発災直後の対応において、以下のような具体的な応用とメリットをもたらします。

従来の手段(徒歩や車両によるパトロール、住民からの電話報告など)に比べ、迅速性、広範囲性、客観性において優位性があり、初動対応における情報不足やタイムラグを大幅に改善する可能性を秘めています。

導入にあたって考慮すべき点とハードル

これらの技術を自治体防災に導入・活用するためには、いくつかの考慮すべき点やハードルが存在します。

導入事例(架空)

【事例1:河川氾濫リスク地区における水位・浸水把握】 内陸部に位置し、中小河川が多いA市では、これまでの経験から河川氾濫時の内水被害や、本流からの越水による局所的な浸水拡大への対応に課題を抱えていました。そこで、特にリスクの高い市街地の河川沿いに、安価で設置しやすいIoT水位センサーを複数設置しました。さらに、市の防災課でドローン操縦の訓練を受けた数名の職員チームを編成し、センサーデータと連携する形で、水位上昇時には指定されたルートでドローンを飛行させ、リアルタイムの浸水範囲や深さ(ドローン映像とセンサーデータから推定)を把握する体制を構築しました。これにより、これまでは住民からの通報や職員の目視に頼っていた浸水状況を、より早期かつ広範囲に把握できるようになり、適切なタイミングでの避難情報の発令や、避難誘導ルートの確保に役立てています。

【事例2:山間部における土砂災害リスク監視】 山間部に集落が点在するB町では、近年の集中豪雨により土砂災害への警戒が高まっています。しかし、広範囲に点在するリスク箇所全てに常時監視の設備を設けることは困難でした。そこで、特にリスクの高い箇所に地盤のわずかな変位を捉える安価なセンサーを試験的に設置。異常値が検知された際には、事前に定めた手順に従い、待機させていたドローンを緊急出動させ、上空から斜面の状況、新たな亀裂、崩壊の兆候などを確認する運用を開始しました。これにより、人的なパトロールが困難な悪天候時でも、迅速に現地の状況を確認し、住民への警戒情報の発令や避難勧告の判断材料としています。

まとめと今後の展望

ドローンと地上センサーを活用したリアルタイム状況把握技術は、発災直後の「見えない」状況を可視化し、自治体の初動対応力を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。導入にはコストや体制構築などのハードルがありますが、具体的な応用事例に示されるように、地域の特性やリスクに応じた適切な技術を選定し、段階的に導入を進めることで、その効果を実感できるものと考えられます。

今後は、AIによるドローン映像の自動解析(被害箇所の自動検出など)や、センサーデータの異常検知精度の向上、そしてこれらの情報を既存の防災情報システムや住民向けアプリと seamless に連携させる技術も進化していくと予想されます。

自治体防災に携わる皆様におかれましては、これらの最新動向に注目し、自らの地域の防災体制にどのように組み込んでいくことができるか、検討を進めていくことが重要となるでしょう。